地域ものづくりのネットワーク化とものづくり改善能力向上のサポートをしてまいります。

<藤本教授のコラム>         “ものづくり考”

<その7>ものづくりインストラクター

 安倍政権による地方創生政策は、まだ準備段階であり、その実質は未知数ですが、経済産業省が進めている「ものづくりカイゼン国民運動」は、すでにその方向性が明確になっています。「流れ」全体を国が支援するという意味で、未来につながる良い取り組みであると思います。
 一方、地域インストラクター構想からは、地域に「良い現場」を残し、そこが生産性向上と需要創造を同時に推進することで、地域の実質賃金率の向上や安定雇用の実現、あるいはシニアであるものづくりインストラクターの第二の人生のやりがいなど、さまざまな良い効果がもたらされると考えています。
 
現場で長年経験を積まれ、定年後に自分の知識、経験を活かしたいと思われているた方はたくさんいらっしゃいます。しかし、自社の現場しか知らない、あるいは異業種の現場で改善指導するには自信がないという方も少なくありません。こうした方々にものづくりの基本である「よい設計、よい流れ」を学んで頂き、共通の言語で指導できるように学んでいただくのがものづくりインストラクター養成スクールの役割です。
 群馬県、山形大学、長岡市などの「地域スクール」とも連携しながら、10年にわたって実証実験を続けてきました。この取り組みが地域経済活性にあたえる効果については、確信をもっています。ただし供給サイドの取り組みゆえに、即効性は期待できません。それでも、長期的な累積効果が徐々に出てくるはずです。昨年(2014年)あたりから、地域インストラクタースクール設立を準備する自治体が加速度的に増えてきましたが、ここにくるまでには、東京大学で10年におよぶ実証実験を要しました。
 ポイントは、(1)どこででも現場改善ができる先生である「ものづくりインストラクター」を育てる師範学校、すなわち「地域スクール」と、(2)そうしたインストラクターが現場改善に出かける発信基地としての「ものづくり改善センター」的なもの、この両輪を地域に準備することです。
 (2)の「センター」だけでは長続きしません。(1)のスクールがあるから、地域のものづくりの知恵を「現場で教える力」に次々と転換でき、「改善の先生」の安定供給が可能になるのです。こうした「スクール」と「センター」を二本柱とした地域の現場改善力の再生産が、地域インストラクタースクール構想の一つの特徴です。
 かねてより現場改善を指導する「コーディネータ」等が多数登録されている自治体もあります。しかし、そうしたところでも、登録はしたものの出動要請がまったくこない、教え方に問題がありリピートオーダーがこない(現場で「もうこないでくれ」と言われた)、自治体が現場訪問回数だけで成果を測り、正味の地域現場力の底上げにつながっていない、などなど問題が少なくないようです。そうした自治体には、今いるコーディネータのリフレッシュ再教育に私たちの仕組みを使うことをお勧めしています。

copyright 2015 Fujimoto Tokyo Univ. 

一社)ものづくり改善ネットワーク  代表理事 藤本 隆宏
東京大学大学院教授/東京大学ものづくり経営研究センターセンター長

☆次回<その8>は、“ものづくりに金融業界が果たす役割”について考えてみたいと思います。

=目 次= 

<その1> “「ものづくり」とは何か?
<その2> “日本の「ものづくり」の競争力
<その3> “4層の競争力
<その4> “日本のものづくりが置かれている現状・課題
<その5> “日本のビジネスモデル"
<その6> “ものづくり、これからの20年"
<その7> “ものづくりインストラクター"
<その8> “ものづくりに金融業界が果たす役割"
<その9> “中小企業とは?"
<その10> “中小中堅企業経営者は何を目指すべきか"

★2017年「続ものづくり考」開始しました。

<その11> “労働生産性と正味作業時間比率
<その12> “デジタルものづくりと三層分析(1)
<その13> “デジタルものづくりと三層分析(2)
<その14> “デジタルものづくりと三層分析(3)

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